小論文 通信教育

 

小論文演習1

 あなたが最初にしなければならないことは、決まっています。

 

 番号の順に演習を進めて下さい。

 

1.志望校の過去問を調べて、出題傾向を確かめること。大学や学部・学科によって同じテーマでも出題の仕方が異なりますし、同じテーマでも、設問の視点によっては求められている作業内容が大きく異なります。

 

年度によって変わることもありますから、注意深くチェックしましょう。これは、目指すところを明確にするための材料になります。もちろん、コピーを取っておきましょう。

 

2.まだ小論文を書いた経験の無い人は、ひとまず過去問でいいですから、書いてみましょう。自分が、目指すところとどの程度離れたところに立っているのかを知っておくためです。

 

これは、学習計画に大いに役立ちます。ただし、ここではまだ目指すところとはどういうものであるのかは明確に自覚できなくてもかまいません。出来るつもりになって自分をごまかしてしまうことが無いように、できない自分を知っておくことが必要なのです。

 

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小論文演習2

3.なるべく簡単な問題を使って、課題のテーマを分析する練習をしましょう。たとえば、駅前にできたケーキ屋さんを誰かに紹介しようとしたら、ケーキ屋さんの情報を詳しく知っておく方が良い説明が出来るのと同じです。

 

そのやり方の基本は、どこまでも自問自答です。なぜなら、自分の言葉で説明できないことは、決して文章に書くことができないからです。まずは駅前のケーキ屋さんを誰にでも映像として思い浮かべてもらえるように具体的に説明できるように、説明材料を自力で見つけ出す練習です。

 

4.この分析吟味という作業は、時間をかけて丁寧に行い、曖昧だと感じていることや表面的なことは決してそれでよしとしてはいけません。不明瞭なまま真相から離れたところで進む議論は、決して他人を納得させることができないからです。

 

受け売りの知識や形式的な言葉でごまかさない姿勢を貫き通す「探求者」になりましょう。そして、分析吟味は、必ずメモを取りましょう。せっかく見つけた材料もメモしないと忘れてしまいますよ。

 

 今回はここまでです。 ここまでの作業をしっかり練習しておいてください。 ある程度小論文の練習をしてきた人でも、このプロセスをしっかり練習することで、必ず立論がやりやすくなり、説得力のある立論に結びついてきます。

 

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小論文演習3

5.分析は必ずメモをとってくださいと言いました、メモの取り方は人によって違ってかまいません。しかし、メモを取ることは忘れないで下さい。メモを取る理由は、忘れないためと、目で確認することで分析して出してきた素材を客観的に眺めなおすことができるという、分析の進み具合のチェックを自ら行い、この方向性で良いかどうかを確認するという重要な意味も含まれています。少し例を見ておきましょう。

 

(例)問題:社会で問題になっている「いじめ」について意見を述べなさい。

 

[1]いじめはどういう接し方のことを言うのか。

 

  A−酷いことを言ったりしたりする

  B−暴力をふるう

  C−仲間はずれにする

  D−無視する

  E−いたずらをして困らせたり恥をかかせたりする

 

(このように自分の疑問を問いにしていくのですが、問いはできるだけ、課題が孕んでいる問題点の真相を究明するつもりで出す方がいいですね。闇雲に出す問いよりも、課題の要求に応じ、考察を現実的に深めていくことになるからです。では、もうしばらく続きを見てみましょう。)

 

[2]誰がどういう人をいじめるのか 

 

  A−力の強い人が力の弱い人をいじめる

  B−上の立場の人が下の立場の人をいじめる

  C−大勢がひとりをいじめる

 

[3]2のA力の強さ、B上の立場、C大勢に共通するものはあるか

 

  A−どれもいじめられる側の人には解決しようが無い「強さ」がある

  B−どれもいじめられる側の人に相対した「強さ」である

 

[4]3のAの「強さ」は解決しようが無い「強さ」なのか

 

  A−相対的な「強さ」だから解決が難しい

 

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小論文演習4

6.このように、自問自答を芋づる式に続けていくことで考えようとしている対象は詳しく理解できていきますね。これが分析するということです。また、メモすることが必要だと言いましたが、先の自問自答のメモを見ることで、次の問いを思いつくことが出来ることもありますし、いくつも出していく自問自答のメモの中で、どこから次の問いへ連続させればいいかが、メモがあれば分かりやすくなるわけです。そうして整理すると上のように単純な一本道の連想のように見えますが、実は、慣れてくると、上の自問自答以外の自問自答を頭の中で整理してしまっているのです。慣れるまでは全部書き出すようにしましょう。

 

7.また、注意して見ると、この自問自答は、単に思いつきを連続しているわけではないことが分かりますね。答えが出せない問いを出してしまった場合はそこで自問自答が行き詰まってしまいますね。行き詰まった場合はその理由を考えればいいのですが、できるだけ分析対象がどんどん理解できる方向に進めていくように注意するといいですね。そのように、問いを尽きることなく出していくためには、発想の柔軟性が必要だと言われますが、発想の視点としては、たとえば次のようなものを練習で使い慣れておくとよいでしょう。ちなみに、これは知識ではなくて、判断の基準ですから、言葉として覚えるのではなく、意味にも幅を持たせて活用するようにしてください。

 

 5W1Hと呼ばれる視点

 

 <とき><ところ><だれ・主体><何・本質><理由・経緯><方法>

 

 そのほか

 

<逆転してみる><時を超える><場所を替える><量を変える>

 

  逆転とは・・・・・善悪・正邪・正当不当・大小・長短・・

 

など基準を変えてみること

 

  時を超えるとは・・いまがこうであれば過去はどうだったのか、未来はどうなるのか・・

とシフトしてみること(場所、量も同様)  

 

 これで分析が少しやりやすくなってきたでしょうか。分析する力を養うには、ひたすら数をこなすことと、その内容や意味を整理して自分の頭でしっかり理解しておくことです。 どうか、これを踏まえて十分にいろいろな小論文のテーマを分析してみてください。

 

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小論文演習5

8.ある対象についての意見や主張を持つということは、その対象のことを、まず詳しく理解しなくてはなりません。そのために、徹底した分析が必要になることは当然ですが、問題は、いくら理解したつもりでも、そこから小論文入試で問われている自分の意見が見つけられなければ、解答作成は出来ないということです。そこで、これから意見や主張を見つけるコツについて解説します。

 

 

 まずはじめに、論作文はもともと、あることに対する解釈や意見を説明するための文章であることを思い出してください。つまり、課題で要求されている解釈や意見は、対象となるものを理解するという作業から始めなければならないということなのです。その理解のために資料が付されている場合が多いのは、課せられている題材が、一般の人が目にすることの少ない内容であったり、課題の問題意識に専門的な、あるいは単純ではない背景や論理が隠されていることが多いからです。したがって、試験論作文の課題に取り組むときの分析は、課題の設問要求を理解するだけではなく、その資料の理解を含めた丁寧な分析が必要であると認識しておいて頂きたいのです。

 

 次に、私たちの理解とは、そもそも、自身の価値観や認識のあり方、知識や教養の深さによって異なるということを思い出してください。同じテレビ番組を観ても、楽しいと感じる人とつまらないと感じる人がいるのは、価値観や認識、知識や教養などに違いがあるからです。つまり、課題を理解するといっても、ひとりひとりが異なる理解をしているということです。異なる理解をしているのですから、そこから出てくる意見も異なるのが当たり前です。他の人と同じ主張をしているときでも、その根拠や目的などのどこかが微妙に異なるものです。論作文では、その微妙なところまで評価されるのですから、自身の見解を、自信を持って訴えられるようにする必要があるということになります。

 

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小論文演習6

 それでは、解釈や意見を見つけるには、どうすればいいのでしょう。対象への理解が異なるがゆえに、問題状況や相関関係の把握から、仮説やその検証、そして見解や主張へと導く立論までも人ごとに異なります。

 

 一方、小論文の添削を受けると、「視点」や「切り口」といった言葉をしばしば見かけると思いますが、それらは、その異なり方を説明するために用いられる表現なのです。それは同時に、「視点」や「切り口」が、解釈や意見の独自性を決定づける決定的な要因であると思われてきた所以でもあります。

 

 だから、視点を変えてみたり、別の切り口から眺めることによって、異なる独自の見解を導く可能性が出てくるとアドヴァイスされるわけです。しかし、問題は、そのように視点を変える、切り口を変えるということは容易ではないということです。価値観や認識を変えることは大変な苦労を要することだからです。

 

 そこで、実際にやるべきことは何かと言うと、「意識の切り換え」です。 往々にしてそれは「自分の認識や価値観を否定する」ところから出発しなければ実現できません。自分の認識や価値観を持ったまま眺めていては、同じ角度から眺め続けることにしかならず、視点も切り口も変わらないからです。

 

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小論文演習7

自分の認識や価値観を否定するということは、必ずしも捨てるということではありません。異なる視点や切り口から眺めて目的を果たせば、元に戻って構わないのです。

 

 例えば次のようになります。

 

 先に、いじめの問題を取り上げましたが、この問題をより多角的に分析するために、ひとまず『自分がいじめをしていると仮定してみる』『自分がいじめを傍観していると仮定してみる』といった切り換えを行います。そのときに、いじめは悪いとか、いじめを傍観する人間はずるいといった自分なりの認識は捨てます。無理やりでもいじめについて白紙に戻して考えようと意識します。

 

 それによって何が分かるでしょう。

 

 もしかすると「いじめる人はどういう快感を得ているのか」「いじめを傍観する人はどういう辛さを味わっているのか」が分かるかもしれません。それは、あなたのこれまで抱いていたいじめに対する問題意識を揺さぶるできごとではないでしょうか。大変な驚き、衝撃的な感覚に襲われるかも知れません。だから、その発見が主張のエネルギーに繋がるのです。

 

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小論文演習8

 自分とは異なる価値観や認識で対象に向かうということは、少なからず「発見」に向かって進むという行為であるとお分かり頂けたでしょうか。その上で、さらにもう一つ言っておかなければならないことがあります。

 

 それは、自分の価値観や認識が自分に与えてくれるものは、対象の理解だと言いましたが、それは同時に、対象に向かう向かい方を与えてくれるものでもあります。いじめに対して、いじめている人やいじめを傍観している人の立場から眺め直してみようという"向かい方"を、確かに自分の認識や価値観のおかげで手にするわけです。

 

 大切なことは、このときに、考察の深まりも、方向も、一切が決まってしまうということなのです。だから、常日頃から自身の価値観や認識を鍛え成長するための学習をしているかどうかが、大きな差を生むことになります。

 

 対象を理解して意見を持つということは、自身の認識を離れようとして離れたところから見直し、そこで得た新しい認識を持ち帰って、認識を再構成するという試みです。

 

 これが、うまくいけば、必ず素晴らしい立論になります。面と向かって話す場合でも、相手を魅了する話しができます。

 

 だから、論作文を成功させようと努力することは、対象との闘いに見えて、実は、己との格闘に過ぎません。己の頑固さや偏重、無知、浅はかさ、逃避、いい加減さとの格闘です。知識ではありません。知識があるに越したことはありませんが、知ることと発見することの間には大きな隔たりがあります。

 

 発見は自身に揺さぶりをかけることができるかどうかの格闘です。発見は自身の認識を操るか操られるかの、苦闘の成果なのです。その苦闘が、文章に滲み出てきて、読む人の胸を打つのです。

 

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小論文演習9

 小論文で書きたいことが決まれば、そこから文章化していく作業に入りますが、一般に論理的展開とか説得的展開と言われるような論展開をするには、どのような工夫をすれば良いのでしょう。

 

 まず、論理的展開、説得的展開とはどういう展開を意味するのかを考えましょう。

 

1)論理的展開、説得的展開とは、その言葉からも分かる通り、読み手にとって論理的、説得的ということです。読み手が論理的な説明だと受け止める、説得的だと受け止める、ということです。

 

 それは試験論文の採点者は常に、非論理的や独善的という正反対のベクトルを持った論作文に出会うことが多いということでもあります。

 

 論作文が非論理的ということは、広い意味での科学的正当性や客観的な論理性を具えていない文章は、特に意識しなければだれでも書けるということでもあります。同様に、読み手を意識した説得的展開を構想することなく、独善的に、あるいは一般論だけで終始する上滑りな展開であれば、特に意識しなければだれでも書けるということなのです。

 

2)しかし、独善的、非論理的、感情的にならないように注意しましょう、と叫ぶだけでは問題は解決しません。注意すべきは、独善的な展開や非論理的展開、感情的展開と、論理的で説得的な展開との執筆準備段階からの具体的な作業の違いでなければなりません。なぜなら、論理的に構想することと非論理的に構想すること、また説得的に構想することと独善的に構想することは、明らかに異なる行為だからです。

 

 

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小論文演習10

 想定する相手には、身近な人を想定すれば、余計な気を使わないで自分の思った通りの説明を展開しやすいと思います。そこで、さらに、自分自身が聞き手になった場合を想定すると一層分かりやすい文章が作れます。

 

 分かりやすい文章――というのは、説得力ある文章の基本は「分かりやすい」ということだからです。試験論文だから「模範解答」に見られるような、いかにも非の打ちどころの無い用意周到な論文に仕上げなければならないといった思いを抱きがちですが、実際に学者やプロの文筆家でも、あらかじめテーマが分かっていて執筆までの準備を万端整える時間があって始めて、そういう完璧な論文を作ることが可能になるのであって、実は、どのような題材が出題されるか分からない上に知識を答えて加点されることが無い試験論文では、たとえ学者やプロであっても、模範解答に見られるような用意周到な論文を仕上げることは不可能なのだと考えて頂きたいのです。

 

 凝った言い回しや美辞麗句、専門用語をたくさん使うことができるのが悪いと言っているのではありません。そういうことは評価の最も重要な要素では無いと言っているわけです。

 

 大切なことは、言いたいことがありのままに伝わる文章を書くことです。だから、気取らず、格好をつけず、普段通りの言葉で書きましょう。ただ、会ったことも無い人に読んでもらうのですから、言葉は標準語で丁寧に、を心掛けてください。

 

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アウトラインを文章化する

 アウトラインのメモが A⇒B⇒D⇒C⇒Eの順に完成しているとき、執筆は、Aから始め、Aを聞き手が目の前にいると想像しながら詳しく、丁寧に説明していきます。

 

 次にAの主題を受けて、Bが反対の内容を述べるのであれば、Bは逆接で始め、BがAを肯定したりさらに詳しく述べる内容であれば、順接ではじめることになるでしょう。

 

 ときには厄介な内容を伝えるために繰り返し、ときには例を挙げて説明し、またときには、前の説明の要点をまとめ、こうして、AからEまでを各段落ごとに役割を果たせるようにつないでいくことで、文章化が円滑に行なわれていきます。

 

 

文章化

 

1.主語・述語を明確にする
2.前の文とのつながりを考慮したスムーズな接続にする
3.修飾語句をふんだんに使って、少しでも分かりやすくする

 

 

 

 内容がアウトラインの各段落の意味や流れ(「文脈」と呼びます)、設問の要求に応じているかどうかも十分に注意しておく必要があります。

 

 「私は男性です。」

 

この文は性別を知らせただけですから、相手には外見の特徴以外に新たにあなたに関して詳しいことが分かったわけでは在りません。文を作るということは、聞き手、読み手の要求に応じて、伝えるべきことを伝える必要があります。

 

 「私は瀬戸内方面で生まれ育ったので、泳ぎの得意な男の子でした。」

 

これなら、どういう子供だったのか、というある程度詳しい事柄が伝えられますね。しかし、いま訊ねられていることが「どういう子供だったのか」でなければ、この文章も要求に応じられていない回答になってしまいます。

 

文章化するときは、このように、具体的な内容を的確に伝えるように気を配る必要があるわけです。

 

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文章の読み

例1 

人間は考える葦であるとパスカルは言った。この言葉にしたがって言えば、考えない人は、人間ではないということになる。たしかに、考えることで人間は進化してきたし、考えることで失敗を反省することも出来る。だから、人間が人間らしく生きていくためには考えるということが必要なのだ。

 

例2 

人間は考える葦であるとパスカルは言った。この言葉の意味は、人間は葦という植物と同じように自然の中で最も弱い。けれども考えることができるという点で最も尊い存在であるというのだ。それでは、人間はだれでも尊くありたいのかというと、別に尊いと思われなくていいから、楽に生きていきたいと思って、考えるということを避けている人が増えていることも確かではないだろうか。

 

例3 

人間は考える葦であるとパスカルは言った。しかし、人間がいつもずっと何かを考えているというわけではない。人間だって何も考えていないときがある。そして、考えていないときでも、その人は人間なのである。したがって、人間は考える葦である時もある、と言うべきであろう。

 

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アウトラインのチェック

<アウトラインの例>

 

 A⇒B⇒D⇒F

 

 非常に大雑把なアウトラインですが、アルファベットは全て自問自答のメモに自分で付けた番号や記号で、その中から、アウトラインに使おうと思って選択して並べてあるわけです。

 

 そこで、段落は、Aが1段落目、Bが2段落目、Dが3段落目、Fが4段落目という具合に、アウトラインが完成した時点で、段落作りもほぼ決まっているはずです。ただ、BとDが切り離すと分かり難い場合や、Aをいくつかに分けて説明した方が分かりやすい場合は、くっつけたり分けたりします。このようにして、段落は完成します。

 

 もちろん、このようにして出来た段落は、もともと自問自答のまとまりですから、意味のまとまりがあるのは当然のことですね。

 

 さて、読み手を意識してこれ以上ないほど分かりやすく納得してもらえると思えるアウトラインが完成したら、執筆を開始することができます。

 

 しかし、執筆を開始するときにも、気をつけなくてはならないことがいくつかあります。

 

「主題に対する問い」

 

 

これから書く文章が試験の設問の要求に応じるための文章である以上、設問の要求に応じた主題であるかどうかの確認が必要です。

 

「技術先進国の立場から日本は環境問題にどのように取り組むべきだと考えるか」と問われているのに、「私は日常生活の中から工夫をしていけば・・」と答えてもだめですね。

 

 あくまでも、設問の要求に応じる主題を用意できているかどうか、ここで再確認しておきましょう。また、もしもここで用意できていない場合は、もう一度分析メモにもどって設問の要求にかなった主題に辿り着く道を探ってみましょう。

 

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段落のチェック

書き始める前に、段落の役割を確認しておきましょう。

 

この段落で課題に対する問題意識を示し、次にその問題意識の具体例や場面をあげて問題意識が示唆する真の問題点を追求して見せ、その問題点の発生原因を次に考察し、仮説を立ててその効果と弊害を示した上で、最後の段落では課題が提示している問題に対する解決策をまとめなおして説明する。

 

といった流れを確認することです。 これに無理があるときは、アウトラインが失敗しているということです。

 

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アウトラインの組替え

したがって、この段階までくれば、決してアウトラインの組替えを行なってはなりません。

 

 アウトラインを組替えたければ、自問自答のメモづくりからやり直さなければなりません。

もしもここでアウトラインを組替え、しかもメモをそのまま使ったら、とんでもない論述が完成します。

 

「私の町には原発がある」というメモと「原発の問題はコントロール不能な技術を実用化することの責任感、倫理観の問題だ」というメモを使って、「私の町には無責任な科学者がいる」と書いてしまうような失敗を行なうことになるかもしれません。

 

 さらにここまでアウトライン作りが終了したら、分析をもうしないで頂きたいのです。

 

アウトラインを見ながら執筆を開始するのですが、そうしながら分析を行なってしまうと、まず間違いなく、分析結果が執筆を左右します。つまり、新しい分析が執筆の内容に加えられ始めてしまうということなのです。

 

 ということはアウトライン作りまでの段階で、もうこれ以上の分析は出来ないという徹底した分析がなされていなければならないということですね。書いている途中で分析を始めると、まず必ず、論述主題がねじれます。

 

 

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アウトライン

ですから、話し始める前に筋書きを決めるには、どういう要素にもとづいて決めればいいかを知っておいた方が良いということは、だれにも分かります。 アウトライン作りをきちんとすれば、複雑な話しでも、幼児にも理解できるものです。

 

 誰もが知っている「桃太郎」。 この話しには登場人物も多いし、話題も豊富かつ面白いですね。しかし、何より素晴らしいのは、複雑な場面、登場人物の関係などを、アウトラインの巧みさで補ってわかりやすくしてくれているということです。

 

アウトラインを変えてみると、伝えたかったことが伝わらなかったり、理解して欲しかったことが理解されなくなるということもあります。

 

アウトラインが効果的に作られている場合は、読み手にある一定の意味が伝わります。余計な意味を伝えず、言いたいこと、伝えたいこと、理解して欲しいことを他のことよりも優先的に理解させること――そのような筋書きが、アウトラインを作成する目的だと言って良さそうです。

 

だから、聞き手、読み手を頭に思い浮かべながらアウトラインを組み立てる必要があるのです。

 

 

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執筆の5ポイント

 文章を執筆するまでの行程で重要な点を5つ挙げておきたいと思います。

 

 

文章化をする前段階の考察の行程では、外界には揺ぎない事実としての情報が存在しているという自覚をもつことです。
これは、自分の認識を疑う機会――自問自答の機会を増やしてくれます。

 

 

その情報を受け止める受け止め方は今の自分の受け止め方以外に幾通りも存在するのだから、絶えずより良い受け止め方を目指して認識を検分し直すということ
――すなわち、より価値があると思われる認識を目指すということです。

 

 

見出した価値を正確に伝えるべく、言葉を丁寧に選んで表明する努力を惜しまないということです。

 

 

他者がその文章を通じてあらためて認識しようとしている価値は、既にその人の中に存在する可能性もあり、あるいは正反対の価値観を有している可能性もあり、あるいはその価値を理解するような認識の仕方をしていない可能性もあるということを、表明する人自身が無視してはならないということです。
これによって、自分の文章を他者の目で見直すことができるからです。

 

 

文章化したときは、その文章に責任を持つということです。それは、文章には、自身のものの見方、受け止め方、認識の仕方、そこから価値を見出す志向性、その判断基準といった、内的世界がそのまま表面化していくからです。
また、そこで表明された言葉は、あなたが表明するために使った単語に較べるとはるかに大きなエネルギーを持っているからです。ときにはその言葉は、人の生涯を左右し、世界をも変え得るのですから。

 

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論述の例

まず、比較的分かりやすく工夫して論述している例を紹介しましょう。どこに著者の努力が感じられるか、言いたいことに向かって進めようというエネルギーが感じられ、読み手の関心を引っ張ってくれるか、注意して読んでみましょう。アウトラインが同じでも、言葉の使い方の巧拙の差が、こんなに結果を左右するのです。

 

 

最近、食事をしに行ってもブティックでセーターを買っても、「〜でよろしかったですか」と店員さんに言われることが多い。

 

 これは、何か変な感じがする。もともと、何か商品を選んでレジに持っていったときに確認の意味で言われるとしたら「こちらでよろしいですか」と現在形になるはずではないか。それが「よろしかったですか」と過去表現を含むのはどういう理由からだろうか。

 

それは、相手の気分を損なわないように気を遣う現代人の感覚に根差しているように思う。

 

たとえば「よろしいですか」と現在形で表現する場合、「あなたはこれを選択しましたが、それで間違いないですか」と、相手の判断に間違いがないかどうかを確認し追究する印象があるのではないだろうか。

 

 これに対して、「よろしかったですか」と過去形で表現する場合は、過去形の部分は自分が「承った」過去の時制を残しており、「あなたの選択を私はこのように聞きましたが、私の聞いたことに間違いはありませんか」という意味になる。つまり、相手の判断よりも自分の聞き間違いがないかどうかの確認をする意図が見えてくる。これにより、お客さんに確認する表現を少しでも柔らかい印象にしようとしているのではないだろうか。

 

 

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論述の例 2

比較的分かりにくくて工夫が見られない論述例をご覧下さい。

 

最近食事でもブティックで買い物しても店員さんがよろしかったですかと言うけど、それはおかしい気がする。だいたい、買い物したときは、こちらでよろしいですかと、現在形で言うのが普通だろう。それなのに、よろしかったですかと過去形で言うのはなぜだろう。

 

それは、お客とか他人に気を遣うのが現代人だからだと思う。

 

たとえば、よろしいですかと現在形で言うのは、「あなたが選んだのに間違いないですか」と、お客の判断の間違いを追究しているように聞こえるのに対して、よろしかったですか、の方は、相手の言ったのを私が聞いたという過去形を生かしたのでそうなっていて、それを今たずねて確認していると言っているので、相手に確認するのを少しでも柔和にしているということだと思う。

 

 このまま読み進めるのがつらいくらい、分かりにくいですね。 これは、言葉の使い方の問題です。

 

 言葉の持っている奥深い意味は、それを使いこなすことで大きなエネルギーを生み出します。それが表現力であり、説得力となります。だから、文章化のときに行なうべき工夫は、言葉のチカラを使いこなす工夫なのだと言い換えても間違っていないと思います。

 

 それには、少しでも多くの本を読み、いろいろな表現に触れ、自らもやってみることが、言葉のチカラを使いこなせる自分へと自らを鍛え上げていく方法だと思います。

 

 

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